「海辺のカフカ」の一節を使用した映画の予告編がネット上で公開
「海辺のカフカ」の一節を使用した映画『BIUTIFUL ビューティフル』の最新予告編がオフィシャルサイト上で公開されている。この予告編は、映画『バベル』で世界中の話題をさらった本作のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督が村上の作品のファンであったことから熱望したもので、海外の一部映画館でも上映されたという。
今回公開された予告編で朗読されているのは、村上春樹の小説「海辺のカフカ」の一節で、「ある場合には運命っていうのは、絶えまなく進行方向を変える局地的な砂嵐に似ている」と始まる文章。昨年には映画『ノルウェイの森』が公開されて話題になった村上だが、こういった形で自分の創作物を提供するのは非常に珍しいことであり、担当者によると、劇中で朗読する場面はないものの、「海辺のカフカ」に感銘を受けたイニャリトゥ監督が、テーマに通じるところがある本作の予告編への使用を熱望。村上側から使用許可が下りたため、今回日本でも急きょオフィシャルサイト上でのみ、公開することになったという。この「海辺のカフカ」の一節が使われた今回のバージョンの予告編は、海外の一部劇場でも上映。日本の文学作品が世界中の映画館で朗読されるという快挙を成し遂げている。
イニャリトゥ監督は、日本から役所広司や菊地凛子が出演している映画『バベル』が日本でも大きな話題を呼び、同作で第59回カンヌ国際映画祭の監督賞を受賞するなど世界的名声も高い映画監督。本予告編の最後には村上の名前や「海辺のカフカ」がクレジットされているが、これも実にまれなことだ。海外での村上の人気はよく知られるところであるが、改めてそれを思い知らされる。
本作は、イニャリトゥ監督が映画『バベル』以来4年ぶりに発表した監督作品。カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品されたほか、第83回アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされた。ハビエル・バルデムは、末期がんであることを知り、愛する子どもたちのために懸命に生きようとする男を好演。今回の予告編では、余命数か月という彼の運命と「海辺のカフカ」の一節が見事にシンクロしており、胸に迫るものがある。本作の演技で、ハビエルはアカデミー賞最優秀男優賞にノミネート。カンヌ国際映画祭では男優賞を受賞している。(編集部・福田麗)
映画『BIUTIFUL ビューティフル』は6月25日より全国公開