「街とその不確かな壁」の名言集
街とその不確かな壁
出版社:新潮社
単行本発売日:2023/4/13
単行本:672ページ
P.92 : きみ
「ねえ」
「あなたのものになりたい」
「何もかもぜんぶ、あなたのものになりたいと思う」
「隅から隅まであなたのものになりたい」
「あなたとひとつになりたい。ほんとうよ」
「でも急がないでね。わたしの心と身体はいくらか離れているの。少しだけ違うところにある。だからあとしばらく待っていてほしいの。準備が整うまで。わかる?」
P.174:影
「耳を貸さないで」
「恐れてはいけません。前に向けて走るんです。疑いを捨て、自分の心を信じて」
P.209
私は本当に正しい場所に向かっているのだろうか? ただ見当違いな方向に、見当違いなやり方で進んでいるだけではないのか? そう思うと、身体のあちこちの筋肉が強ばった。だからできるだけ何も考えないように努めた。頭を空っぽにしておかなくてはならない。そして自分の中にある直感を — 理論では説明のつかない方向感覚を — 信用して進んでいくしかないのだ。
P.383:私
「ときどき自分のことがわからなくなります」
「あるいは見失うというべきかもしれません。この人生を自分として、自分の本体として生きている実感が持てないのです。自分がただの影のように思えてしまうことがあります。そのようなとき私は、ただただ自分を形どおりになぞって、巧妙に自分のふりをして生きているような、落ち着かない気持ちになってしまうのです」
P.384:子易さん
「今ここでわたくしに申し上げられるのは、ただひとつ — それは、信じる心をなくしてはならんということです。なにかを強く深く信じることができれば、進む道は自ずと明らかになってきます。そしてそれによって、来たるべき激しい落下も防げるはずです。あるいはその衝撃を大いに和らげることができます」