「レキシントンの幽霊」の名言集
レキシントンの幽霊
出版社:文春文庫
単行本発売日:1994/04
文庫本:213ページ
七番目の男 P.177
男は言葉を探すように、もう一度シャツの襟に手をやった。
「私は考えるのですが、この私たちの人生で真実恐いのは、恐怖そのものではありません」、男は少しあとでそう言った。「恐怖はたしかにそこにあります。……それは様々なかたちをとって現れ、ときとして私たちの存在を圧倒します。しかしなによりも怖いのは、その恐怖に背中を向け、目を閉じてしまうことです。そうすることによって、私たちは自分の中にあるいちばん重要なものを、何かに譲り渡してしまうことになります。私の場合には――それは波でした」